MEIMU『HOUSE OF THE HORROR』ワニブックス 1998年

 6編よりなるホラー短編集です。モンスタ系あり,SF系あり,サイコサスペンス系あり,ファンタジィ系あり,とヴァラエティに富んでます。物語としても,各短編,なかなかひねりがきかせてあり,楽しめます。ただ女性キャラクタの絵柄はいいんですが,男性の方がどうもいまいち・・・。出てくる連中,みんな顔が異様に小さくて,身体がでかい。要するにデッサンがおかしいんですよね。そこらへんが気になって仕方ありませんでした。
 ところで,この作者,その昔『メディウム』(徳間書店)というホラーコミックス誌に描いていたのではないでしょうか? 特徴的なペンネームですので,なんとなく覚えています。ただ,どういうタッチで,どういう話だったかは,とんと忘れてしまいましたが・・・(違ったかなぁ? 間違っていたらご容赦を!)。

「HOUSE OF THE HORROR」
 転落して記憶を失った少女。彼女が目覚めた館には惨劇の痕跡が・・・。
 被害者と思っていた方がじつは加害者で,加害者がじつは被害者,とか,人間と思っていた方がモンスタで,モンスタがじつは人間,という,ラストで世界が反転する作品は,けっこう好きです。ただ問題は,どううまく読者をミスリーディングしていくか,というところ。この作品の場合,すぐに見当がついてしまったのが残念。最初から,あのエピソード出してしまうのは,ちょっとねぇ・・・・。
「DOLL」
 ストーカーに閉じこめられた女子高生レイコ。ストーカーの正体はいったい・・・。
 物語はふたつの流れで進行していきます。ひとつはビルの1室での,レイコと,仮面で顔を隠したストーカー。縛られた彼女を,ストーカーはカッターナイフで責め苛みます。もうひとつは,閉じこめられる以前のレイコ。彼女の周囲には複数の男性の影があります。そのうちストーカーは誰なのか? オチはまあそれなりに,といったところでしょうが,先に書いたような,男性キャラのデッサンのおかしさのために,ちょっと白けます。日本に,こんなに身体のでかい白髪の老人がいるかい!
「SIREN―水の生命体―」
 水の惑星と呼ばれた星。その名の通り,この星は水に覆われた。小さな地面を残して・・・。
 不思議な作品です。異なる時制のエピソードが,さながらパッチワークのように,並べられています。映画なんかでよく見られる手法ですが,この作品では,ページをめくるとエピソードが変わる,という方法を採用することにより,効果が増しているように思います。その結果,幻想的な雰囲気が生まれてきます。最初は戸惑いましたが,再読するとなかなか味わいがあります。
「大地の果て」
 少女は,村を救うため,単身,旅に出た・・・。
 話そのものは,ペシミスティックなファンタジィという感じで,ありがちなものですが,最後の1コマでぶっとびます。思わず爆笑してしまいました。ネタばれになるので書きませんが,暇つぶしにはもってこいです(笑)。
「研究室の異形」
 事故で娘を失った浅沼教授は,毎日夜遅くまで研究に没頭し・・・。
 これもねぇ,ネタとしてはおもしろいんですよ。だけど,そこに持っていくクライマックスが短すぎる。そのあたり,もう少し丁寧に書けば(あるいはコマの配分を変えれば),もっとラストのツイストが効いたんじゃないでしょうか? う〜む,残念。
「赤い花―BLOODRED―」
 私に関わる人々は必ず悲劇的な死を迎える。そしてその場には赤い花が・・・。
 自分に不幸をもたらすばかりと思われていた“赤い花”の正体がじつは・・・,というお話。ここでもラストで反転する世界がいいです。

98/01/08

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