水田恐竜『放課後キッチン』4巻 ぶんか社 1997年

 主人公は吾妻ちかこ,16歳,女子高生。それでいて主婦。いわゆる“幼妻”(ふ・・・ふる〜〜)夫は幸夫,26歳,常識人のサラリーマン。ちかこの兄は,住所不定の放浪癖の持ち主(どーやら埋蔵金を探して一攫千金を目論んでいるらしい)。武の恋人・サンディはアメリカからの留学生。はじめの頃は常識人だったのですが,武とつきあうようになって,だんだん壊れていってます(笑)。幸夫の妹・みづほは,大学生ながらプロ顔負けのギャンブラー。恋人・小千谷先生(ちかこの担任)とのデートは,競馬・競輪・パチンコ屋。そのほか,ちかこの高校の友人・トキを巻き込んで繰り広げられる,ドタバタコメディ4コママンガです。

 掲載紙が『みこすり半劇場』ですから,一応「H4コマ」ということになるんでしょうねえ。たしかに下ネタが多いです。けど,主人公が夫婦なので,その下ネタも,妙に所帯じみています(笑)。どちらかというと,夫婦ネタの4コマをちょっと(?)Hっぽく味付けしたような,そんな感じです。とくに,ちかこの「お帰りシリーズ」がいいです(「お帰りシリーズ」というのは,ちかこがいろいろコスプレして,幸夫を玄関先迎えるというシリーズ。設定はHっぽいけど,ちかこのコスプレのバカバカしさが笑えます。試験の直前になると逃避モードになって,やたらと凝ります(笑))。
 またちかこが女子高生なので,学園4コマ的なノリも楽しめます。学園祭やら体育祭,定期試験など,学園季節ネタはしっかりおさえてます。さらにみづほのギャンブルネタ,武の放浪ネタ,またこの作者お得意の「わけがわからんけど,変におかしい」ネタなどなど,「H4コマ」という一言ではくくれない,1粒で2度も,3度もおいしいマンガです。
 帯に「大人気」と書いてあり,まあ帯の惹句ですから多少さっぴいて考えなきゃいけませんが,1巻200ページ弱の本が,4巻まで出ているんですから,もうすでに泡沫4コマとは呼べないでしょうね。絵柄も,オーソドックスなギャグ系のタッチで,安定していることも続いている要因のひとつかもしれません(4コママンガのなかには,どうしようもなく下手くそな絵ってありますものね)。

 この巻では,前巻で,なにやら急接近だった武&サンディペア,みづほ&小千谷先生ペアが,あっというまにくっついてしまいます。もう少しひっぱるかなあ,と思っていたので,ちょっとびっくりしました。まあ,だからといってノリが変わるわけではありませんが。とくに,片やほとんどホームレスの武と,片やちょっと古めの日本文化愛好者サンディとの組み合わせは,いい味だしています。最終回では,サンディにくっついて,アメリカまで放浪しちゃうんじゃないですかね,武は。

 ところで,この巻の中で,サンディが6時間銭湯に粘るというネタがあるんですが,鹿児島の銭湯はすべて温泉で,700円で1日中いられます。2階に大広間があるところもあり,仮眠もでき,爺さん婆さんの社交場と化してます(笑)。

97/10/04

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