佐々木倫子『Heaven?』3巻 小学館 2002年

 フランス料理店“ロワン・ディシー”を舞台にしたコメディの第3集です。

「第18話 無償の奉仕」
 お客から箸を出してくれるよう頼まれた店員たちは…
 食事と読書って,作る(書く)側の意図と食べる(読む)側の嗜好が必ずしも一致しないという点では,なんか似てますね。「どう食べようが,注文したおれの勝手だ」という言い分にも,それなりに正当性はあるのかもしれませんが,あまりに料理した人に対する敬意を欠いた態度でもありますよね。
「第19話 決戦は日曜日」
 元銀行マンの山縣には,密かな決意があり…
 ときどきテレビなんかでも出てきますよね,こういった「資格オヤジ」(笑) こういう人を見るたびに,『はみだしっ子』(三原順)中の,こんなセリフを思い出します。「資格の1ダース・2ダース,コレクションしてみたとて,それだけじゃ足りねェ! 他人はそれなりの信頼と実績を勝ち得た時初めて“ものになった”と言うんだ!」 まぁ,「趣味」と割り切れば,それはそれでいいんでしょうが^^;;
「第20話 覆面記者は笑わない」
 レストラン評を書くため,隠密で記者が取材に来るのではないかとオーナーは言うが…
 オーナーの思いこみというか,妄想というか(笑),に,店員たちが振り回されるというのは,この作品のパターンのひとつですが,今回は,みんなにその妄想が伝染して「ああでもない,こうでもない」と自縄自縛に陥っていくところが,なんとも愉快です。でも実際の話,この手の記事って,店側にとっては死活問題なのでしょうね。
「第21話 白い恋人」
 豪雪の中,“ロワン・ディシー”は,客が居るままに孤絶。おまけに停電まで…
 めったに大雪などないために,東京は,雪に弱いという話を聞いたことがあります。かえって雪国の方が「備え」はしっかりしていますからね。それにしてもオーナーを救助(?)のために派遣するというのは無謀でしょう。パニック映画で,自分だけ助かろうとして,真っ先に死ぬタイプですから(笑)
「第22話 蛙の語源」
 道に迷ったお客を店まで導く蛙。それは恩返しなのか…
 「蛙の恩返し」という,どこかファンタジィ・テイスト(<どこが!)の展開が,ラストで理に落ちるところは,まさにミステリ!(<だから,どこが!(笑))。
「第23話 無意識の墓参」
 春,“ロワン・ディシー”の周囲の墓地は,花見の客であふれかえり…
 伊賀くんの融通のきかなさと,オーナーの臨機応変(節操の無さ?^^;;)を足して2で割るとちょうどいいんですがね(笑) ところで桜の下に出てきた幽霊(?),なぜか太宰治かな?と思ってしまったのは,どういうわけだろう? ちなみに「東京路上探索学会」というのは「路上観察学会」のパロディで,しっかり荒俣宏のそっくりさんが登場してますね。
「第24話 人生の定量」
 かつて牛丼屋につとめていた店長・堤は,牛丼屋に戻るよう誘われるが…
 「人生の転機」なんていうのは,けっこうひょんなことから訪れるのかもしれません。堤店長「人生の牛丼の定量を食べてしまった」から牛丼屋を辞めた,というのは,なんかわかるような気もします。まぁ,転職先が“ロワン・ディシー”では「早まった」という気持ちもわかりますが(笑)

02/08/25

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