竹本泉『はたらきもの』朝日ソノラマ 2002年

 かつて宙(おおぞら)出版から出された作品集のリニューアル版です。このほか『ちまりま わるつ』『虹色♪爆発娘』『ばばろあえほん』が出されています。で,リニューアルのシリーズ名が「Izumi Takemoto Dashinaoshi」。まあリニューアルを翻訳(?)すれば,たしかに「出し直し」なんでしょうが…いやはや(^^ゞ

 さて本集は,タイトルにありますように「はたらく少女」を主人公にしたシリーズ3作を収録しています。
 最初の「ロケットガール」「ロケットガール2 金のワイン銀の翼」は,これまたタイトルのまんま,ロケット大好き少女パスミラト・ハイジ・W(ウイウイ)が主人公です。時は西暦2216年,飛行艇が全盛,「花火の親玉のような危険きわまりない」ロケットはすでに時代遅れ,という設定がユニークですね。でもこの作者ですから,飛行艇とロケットの飛行原理の違いなど,いっさい説明はありません(笑) ロケットの造形にしてからが,いまや絵本くらいにしか見ることのない,なんともレトロなものです。でもそこらへんがこの作者らしいところといえば,らしいところです。
 で,「らしい」と言えば主人公ハイジの性格。絵柄は,例によってかわいいのですが,けっこうタフネス(笑) 笑ってしまったのが,ボーイフレンドのチェズとのキス・シーン。わざわざ岩の上に乗ってキスのし直し,「これからキスするとき,中腰になって身長合わせてね」というところは,笑いつつも,思わず「ふむふむ」と納得してしまいました。こういったのって,当たり前なんですが,あまり描かれることってないですよね。

 おつぎの「恋するふわふわ娘」「ふわふわなパチパチ」「夜の月はふわふわ」の主人公は魔法使いエレン・ふわふわ頭・オーレウス(なんちゅうネーミングや!)。見た目はかわいい女の子ですが,どうやら数世紀にわたって年をとらないバケモノです(笑)
 というのも,最初の「恋する…」の舞台は中世。道に落ちていた(笑)素敵なジーとともに,魔法の森で行方知れずになった王子様を探しに行くというエピソード。ジーの「猫だ,かわいい」というセリフを伏線とするミステリ的ツイスト(<ホントか?(^^ゞ)が楽しめる1編です。次の「ふわふわな…」は,どうやら19世紀くらいでしょうか? 5年ぶりにアハ村に戻ったエレン。なぜかその村の男たちはヒゲだらけ,その裏には魔法のにおいが…というお話。ドラゴンやノームの呪いだったら,ふつう,もっと陰惨なのが定番ですが(<ホラーの読み過ぎ?^^;;),ヒゲが生えるだけというところが楽しいですね。
 最後の「夜の月の…」は,現代,1971年が舞台です(なんで特定できるかというと,作中に出てくるアポロ14号が月に着陸した年なんです。ちゃんと調べました(笑))。魔法など影も形もない時代ながら,なぜかエレンの経営する「魔法の店」が大繁盛,というのが,なんとも痛快です。まぁ,あとの内容はふつうのラヴコメといったところでしょう。しかしそれでいながら,魔法の力でガールフレンドテリーに愛の告白をした気の弱いボブ,でもそれに対してテリー曰く「今度,魔法を使わないで誘ってくれたらデートに行くわ」,といった展開が,いわゆる「ラヴコメ」とはひと味違った,爽快で気持ちよい処理ですね。どこか洋画にも似た手触りです(テリーの造形も,そんな洋画に出てきそうな感じです)。

 ラストは「水平線に海の歌」。時は「ロケットガール」と同じ西暦2216年,こちらは海です。鯨やイルカが国連に加盟しているという時代のお話(って,この設定,けっこうぶっ飛んでますね)。でもって,鯨の「歌」がCD(なのかな?)で売られていて,その海賊版の出所を探す,という内容。海育ちの主人公パーリエ・アナ・N(ナナセ)と,中央アジアのど真ん中育ちのウガム・ウザム・U(ウデマエラ)のやりとりが,なんかほのぼのしていていいですね。それと,女の子の水着がたくさん出てくるうれしい作品です(をい)。ふと大昔に見に行った『イルカの日』という映画を思い出しました。

03/08/02

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