西原理恵子『はれた日は学校をやすんで』双葉社 1995年

 『KYO』(たかしげ宙・皆川亮二)が『小学六年生』に連載されていたというだけでも,かなり驚いたのに,サイバラのこの作品も,『小学六年生』掲載とは・・・。最近の小学生というのは,こういうコミックを読んでいるのか,と愕然呆然としてしまいました。まあ考えてみれば,小学生だって『ジャンプ』や『サンデー』『マガジン』を読むわけだから,『小学○年生』にこういうのが掲載されていても,けっして不思議ではないのですが,『小学○年生』というと,どうしても「学習誌」みたいなイメージが強くて,やっぱり驚いてしまいます。隔世の感がありますねえ。わたしが読んでいた頃は,無名時代の六田登や御厨さと美が,イラストみたいなのを書いていたような記憶が・・・(年がバレバレですね(^^;)

 サイバラというと『ゆんぼくん』と『まあじゃんほうろうき』くらいしか読んだことはなかったのですが,この作品集は,『ゆんぼくん』に近い作風のものを中心に集めたようです。この作者が描く絵は,けっして上手いといえるものではありませんが,シンプルな描線をはみだして塗られた,水彩画のように透明感ある色使いは,少女や少年のナイーブな心の動きを描き出すのに,とてもマッチしています。ただしこの感想は,『ゆんぼくん』やこの本の表題作のような系統にあてはまることですから,くれぐれも『まあじゃんほうろうき』系統の作品にあてはめないでください(笑)。『まあじゃん』のほうは,どちらかというと「無頼派」といった感じで,最初は「麻雀をおぼえたての女性が巻き起こすドタバタ」といった雰囲気でしたが,後半からとんでもないダークサイドに足をつっこんでしまい,多少なりとも麻雀をかじった方なら,読んでいて怖くなるような作品です(わたしはこんな麻雀打ちたくない,けっして)。

 さきほど,「少女や少年のナイーブな心」なぞと書きましたが,この作者が描く少年少女たちは,自分がナイーブであることをむしろ隠そうとし,否定しようとしているような印象があります。また彼らはしばしば,早く大人になることを望んでいるように見受けられます。なぜなら,彼らは子どもゆえの「ナイーブさ」のために傷つき,またそれが宿命的にもつ「弱さ」や「不器用さ」から抜け出したいという気持ちがあるからなのかもしれません。タフでなければ生きては行けない世の中で,ナイーブさがけっして有効な武器にはならないことを,彼らは子ども心に,いや子どもであるからこそ,敏感に感じ取っているのではないでしょうか。しかし皮肉なことに,その「隠そう」「否定しよう」という心理が,彼らのナイーブさを,よりはっきりと浮かび上がらせているように思います。けれどもその「ナイーブさ」は,失ってしまわないと,二度と手に入らないものであることを知ることができないもののようです。

 この作品集の中では,サイバラ版『犬を飼う』ともいえる,「はにゅうの夢 第4話 ジョン」が好きです。

97/05/04

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