椎名高志『GS美神 極楽大作戦!!』32巻 小学館 1998年

 解毒剤を入手するため,南極大陸に到着した美神らGS一行。異空間に築かれたバベルの塔の中で,ついにアシュタロスに相まみえる美神と横島。が,彼らを待っていたのは,アシュタロスの意外な言葉だった。
「よく戻ってきてくれた。我が娘よ・・・。信じないかもしれないが,愛しているよ」
 その言葉に前世を思い出す美神。金縛りのごとき状態に陥った彼女がポツリとつぶやく。
「アシュ様」
と・・・。
 嗚呼! 魔神の前にさすがの美神も無力なのか!!

 てな具合ではじまった本巻のエピソード「GSの一番長い日!!」。こんな風に書くと,おもいっきりシリアスめいてますが,そうは問屋がおろしません(<死語)。
 操り人形のようにアシュタロスの前に立った美神が叫びます。
「ざけんな クソ親父―!!」
「私の現世利益を妨げる奴は,神も悪魔もぶっつぶす!!」

 をををを! パチパチパチパチ!!(<拍手)。
 やっぱりいいですねぇ・・・。熱血になりそうでいてけっして熱血にならない,あるいは熱血の場面においても,つねにギャグを配慮した(いい意味で)醒めた視点を失わないのが,この作者の持ち味なんですよね。
 そのことは,アシュタロスの攻撃の前で,絶体絶命のピンチに陥りながら,繰り広げられる美神とルシオラの痴話喧嘩(笑)とか,追撃してくるベスパに対する「北風と太陽の術」とかにも,十二分に発揮されています(ほかのマンガでやったら顰蹙もののネタを,すっかり作品世界に馴染ませているところがすごいですね。というか,もともとそーゆー世界なのか(笑))。
 まさに横島が言うように,
「あーゆーもったいぶった奴をギャグの世界にひきずりこんで, 三枚目として葬り去るのが得意技でしょ!?」
というわけです。なるほど,このセリフが,この作品の基本を的確に表現してますね(笑)。

 さてアシュタロスとの直接対決,なにやら有耶無耶のうちに終息してしまった感じがしないでもありませんが,これで終わりじゃないでしょうねぇ? たっぷりと含みも残しているようですから二戦三戦が待っているのでしょう。
 で,物語はふたたび(?)ラヴコメ・モードに突入しそうです(笑)。「私たち一緒に暮らせるのよ!」と言いながら,横島の首にかじりつくルシオラ,顔をひきつらせる美神,というところで本巻は終わり。さて次巻はいよいよ修羅場でしょうか?(わくわく♪<なにを期待しているんだか(^^ゞ)。
 それにしてもおキヌちゃんとはどーなったのでしょうか? う〜む,やっぱりおキヌちゃんでは,美神に対抗するには役不足だったのかなぁ?(ああ,おキヌちゃんファンの方,石を投げないで!)

 ところで,その外観がもろウ○ト○マ○という,美神と横島の「合体技」,ひっぱったわりには,あっけなくやられてしまいましたね。まぁ,それも,「ひっぱったうえで,あっさり落とす」という,この作者の得意技かな? もしかするとまた出てくるかもしれないけど・・・

98/08/19

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