細野不二彦『ギャラリーフェイク』23巻 小学館 2001年

 8編を収録しています。

「ART.1 リング・RING・指輪」
 近づくクリスマス。サラはフジタにプレゼントを期待するが・・・
 ひさびさにフェイツイ登場。彼女のマゾヒスト秘書メノウさん,相変わらずいい味だしてますねぇ(笑) それにしてもフジタ,女の子に指輪をプレゼントするのに「My Dear Little Sister」はないでしょう。サラが怒るのも当たり前^^;;
「ART.2 古裂(こぎれ)の華」
 有名ブランド“キクシマ”の後継者となった青年は,しかし・・・
 なんでしたっけ? 同じように有名ブランドの後継をめぐって,兄弟が骨肉の争いを繰り広げたのは?(キリシマ? う〜む,ワイド・ショーネタはすぐに忘れてしまう^^;;) 「古裂」というのは,要するに和風パッチワークみたいなものなのですね。
「ART.3 落人たちの宿」
 ヤクザとのトラブルを避け,ひなびた温泉に逃げ込んだフジタは,そこで・・・
 2000年11月に発覚した旧石器捏造事件がモデルですね。本物の方は,どうやら「出来心」ではなく,かなり昔からやってきたらしいことが明らかになってますが・・・それにしても,埋蔵金探しと考古学を一緒にするのは,考古学者にあまりに失礼だと思いますが^^;;
「ART.4 来るべき世界」
 新型ロボットのCMに,フジタが貸した絵画が使われることに・・・
 「アイボ」が元ネタかと思います。本シリーズにしてはめずらしい,ビターなテイストの作品です。ただ,コンピュータ=ロボット=非人間化という図式は,少々通俗的な感も強いですね。
「ART.5 SWEET TRAP」
 かつてギャラリーフェイクでアルバイトしていた女性と再会したフジタは・・・
 ははは! このエピソードは良いですね。「なにか落とし穴があるな」と予想させる展開ではありますが,こんな風な形でフジタが利用されるというのも,なんか小気味よいです。改めてタイトルを見ると,ニヤリとさせられます。本集中,一番楽しめました。
「ART.6 古書の狩人たち」
 神田古書街を訪れたフジタとサラは,ひとりの老人と知り合い・・・
 本編に出てくる山田休太郎『聖女淫楽』というのは,山田風太郎『虚像淫楽』でしょうね。帯付きの古書の値が高いことは知っていますが,それを偽造するというのもまた,なんかこすからいというか,それはそれで凄いというか^^;; そういや,神田古本街にも久しく行ってないなぁ・・・(°°)
「Art.7 もうひとつの鳥獣戯画」
 フジタを“フェイク”の世界へ引き入れた菱沼からの依頼内容は・・・
 ひさしぶりに「フジタの過去シリーズ」(シリーズなのか?)。無頼に生きた菱沼の「辞世の言葉」はかっこいいですね。ところでフジタがメトロポリタン美術館を辞めた理由って,まだ描かれていませんよね。もしかして最後のエピソードまで取り置いておくのかな?
「ART.8 泥の河」
 川底からの陶磁器の引き上げを仕事とする男に,フジタはある依頼をし・・・
 これまたビターなラストを迎える作品です。川底から男が引き上げようとしたもの,それは,彼自身の「幸福な未来」だったのかもしれません。そんな男を押し流して,滔々と流れる川面を見つめる女の眼差しが哀しいですね。ところで,バンチェン文化の年代,「紀元前4000年」と書かれてますが,現在の研究では,そんなに古いものではないと考えられているようです。

01/11/26

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