細野不二彦『ギャラリーフェイク』22巻 小学館 2001年

 ひさしぶりの前中後編を1編含む6編を収録した第22集です。ところで,今さらながら気づいたのですが,各編の「ART.○」というのは,もちろん「芸術」「美術」という意味もあるのでしょうが,「PART.○」のパロディでもあるのではないでしょうか?

「ART.1 ニューメキシコの青い空」
 インディアン・ジュエリーを商うハウザーを追って,フジタは・・・
 この作品に出てくる“インディアン・ジュエリー”のようなエスニックな芸術品が評判が高くなっているという話を,なにかで読んだことがあります。ただレアなままでは,やっぱりだめなんでしょうね。それがいいことなのかどうかは別として・・・
「ART.2 ニューヨーク散歩」
 ウィークエンド・マーケットに出かけたサラは・・・
 そうなんですよねぇ,アメリカのキャラクタ・グッズって,グロテスクというか,なんていうか,どうも今ひとつ「ピン」と来るものがありません。日本の場合,もしかするとデフォルメされたアニメ・キャラの影響が強いのかもしれませんが・・・
「ART.3 百価展覧会」
 フジタは老舗デパート・ツルカメ百貨店の元会長から鑑定を依頼され・・・
 モデルはいうまでもなくソゴウでしょうね。結局,日本経済を支えていたのは,首脳部ではなく,最前線でがんばっている人たちなのでしょうね。
「ART.4 カリスマ真贋」
 三田村館長から,新しいタイプの現代アーティストを紹介されたフジタは・・・
 こういった「現代アート」って,ホントにあるのでしょうかね? まぁ,たしかにフジタの言うとおり「パクリ野郎」でしょうけど(笑) ところで「カリスマ」という言葉が,マスコミで盛んに取り上げられるようになったのは,いつからなんでしょうかね? 基本的にひねてくれている(笑)わたしとしては「カリスマ」と聞くだけで,眉に唾をつけたくなっちゃうんですけど^^;; 
「ART.5 和と美」
 フジタとサラが地蔵に連れて行かれた場所には,隠棲した大陶芸家がおり・・・
 たしかに,地蔵のセリフ,「人の和こそ美」という言葉にも一抹の「真理」があるのかもしれません。しかし,芸術家が「人を超えゆくもの」を目指すとき,「人の和」は,むしろ足枷にもなるでしょう。「美」をめぐる地蔵とフジタのスタンスの違いは,なかなか興味深いものがあります。
「ART.6 メソポタミアを統べる者」
 20年ぶりにイラクの遺跡を訪れたフジタ。そこではかつて不可解な事故死があった・・・
 久々の前中後編よりなる,ミステリ・テイストの作品です。いまだ他国との交流が閉ざされているイラク,メソポタミア文明の栄華を伝える遺跡群に隠された考古学上の謎,20年前の日本人教授の怪死・・・古代の謎と現代の殺人事件,さらにイラクを取り巻く国家的状況が二重三重に折り重なりながら進行していくストーリィは,なんだか松本清張作品を彷彿させますね(笑)。なかなかの力作で,本集中,一番楽しめました。ところで,死んだ江波教授というのは,実在の考古学者(「騎馬民族征服王朝説」で有名な)江上波夫がモデルではないかと思います(ちなみに江上教授の方は健在です(^^ゞ)。

01/09/22

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