細野不二彦『ギャラリーフェイク』21巻 小学館 2001年

 前々からこの作品,主人公フジタの顔が,どうも不安定で,「アシスタントに描かせているんじゃないかい?」などと思っていたのですが,それにしても今回の表紙は,ちょっといただけません。まるで少女マンガのようなパッチリおめめ。とてもフジタには見えんぞ!ーー;;

「清香(チンシャン)茶会」
 台北で,古画の真贋鑑定を依頼されたフジタは,そこで「茶藝」の創造に熱意を燃やすひとりの男と出会い・・・
 本エピソードのイントロに使われている「清明上河図」。これ,けっこう味わいのある絵で,好きなんです。全体は「清明節」という祭日の情景を描いた大きなものなのですが,とにかく微細に人々の姿や街の風景を描き込んでいて,見ていて飽きません。まぁ,それはともかく,「茶」をめぐる実業家と暗殺者との奇妙な因縁を描いた本作品,緊迫感があり,楽しめました。ただ ,フジタはこんなに反射神経よかったのかなぁ(笑)
「二重奏」
 ロンドン警視庁の美術品捜査官ワーナーは,盗まれたフェルメールの絵画を奪還すべく,オトリ捜査に潜入し・・・
 18巻で登場したワーナー捜査官の再登場です。ストーリィ展開としては,ありがちですし,ハン・ファン・メーヘレンの扱いも単に「解説」以上のものではないという点で,いまひとつですが,ラストの処理は温かみがあってよいですね。
「ニンベン師の逆襲」
 経営するイメクラで,偽造カードが作られていることを知った元にんべん師・木戸は・・・
 これまた古キャラの再登場です(何巻か,忘れちゃいましたが^^;;)。う〜む・・・ますますネタが行き詰まってるんじゃないかなぁ・・・でも,既成のイメクラに飽きて,自分で「こだわりのイメクラ」造っちゃうというのも,これはこれで「マニアの王道」かも?(笑)
「花と3ばか」
 経営回復のために絵を売りに出そうとした大学で,フジタは変な学生に出会い・・・
 本編の牧原謙一のモデルは,植物学者牧野富太郎でしょうね(フジタがコンピュータで検索しているときに,ディスプレイ上に出てきます)。今じゃ,DNAも商売のタネなんでしょうね。フジタのセリフ「“神様”よりもあつかましい商売だよな」には苦笑させられます。たしかに「神様」もけっこうあつかましいですものね。
「雨やどり」
 雨やどりで,フジタが飛び込んだスナックの壁には,1枚の奇妙なゴッホの模写がかけられており・・・
 こういった,とある飲み屋で見知らぬもの同士の人生が一瞬交錯するというシチュエーションは,しばしば見られるパターンながら,個人的にはけっこう好きです。そこにこの作品のメイン・モチーフである絵画(の修復)と,「パイプの好きな理由」を絡めたあたりは,着眼点がおもしろいですね。ラストは,あと1〜2ページあって,マスターの対応を描いたら,もう少し余韻が深かったかも・・・
「43分の1営業所」
 自動車の販売営業所に勤める松村は,ミニカーのコレクタでもあり・・・
 奥さんに「余分な部屋」と言われ,泣く泣くミニカーを売りに出さねばならないおとーさんの気持ち(「い・・・いやだぁ〜〜!!」)をわかる方が,このページに来られる方の中には多いのではないでしょうか?(笑) それにしてもミニカーのサイズ「1/43」というのが世界共通だというのは知りませんでした。「日本のみ例外」というのは,なんか少々情けない感じもしますが・・・

01/04/17

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