細野不二彦『ギャラリーフェイク』17巻 小学館 1999年

 6つのエピソードを収録しています。

「ART.1 ルナティック・ルナシー」
 藤田が所蔵する,スイスの高級時計メイカ“ブランパン”の名作中の名作“1735”には,ひとつの部品を欠いており・・・
 このエピソードで取り上げられている“ムーンフェイズウォッチ”のように,かつての生活にとって,「月」は欠くことのできないものだったのでしょうね。いつの頃なんでしょうね,月がわたしたちの生活から姿を消したのは・・・(°°)
「ART.2 堕天使の聖夜」
 クリスマスのチャリティ・オークションへの出品を,三田村館長から依頼された藤田が用意したものは・・・
 個人的には,前々から,気にかかっていたことが解決されて,すっきりした1編です(笑)。う〜ん・・・やっぱりそうだったんだ・・・
「ART.3 ペン先の値段」
 家族から浪人生に贈られた蒔絵の万年筆。しかし受験直前にそのペン先が壊れてしまい・・・
 学生時代にアルバイトしていた設計事務所で,マンホールや側溝のカタログがあるのに感動した記憶があります。普段気にしないものを造っている人がいる,という,当たり前と言えば当たり前のことがじつに新鮮でした。作中に出てくる「壊すほうは簡単だろうが,直すほうは真剣勝負なんだよ」というセリフは重みがあります。
「ART.4 東方の三国士」
 台風で破損した五重塔。しかし“檜皮(ひわだ)”が入手困難なため,修復もままならず・・・
 美術品にはそれ自身ミステリアスなもののせいでしょうか,やはりミステリ・タッチなストーリィがフィットするのでしょうね。五重塔の修復,檜皮職人の失踪,“百万塔”といった,一見無関係に見えた物事が,ラストでするすると結びつく本エピソードは,本巻で一番楽しめました。
「AET.5 トンパ・ミステリー」
 中国上海に買い出しに来た藤田とサラ。そこで“トンパ経典”を見かけた彼らは,その故地・雲南へと飛ぶ・・・
 本編も,タイトルにあるように,中国を舞台にしたミステリ的なエピソードでありますが,前作に比べると,個々の素材のあつかいが拡散的というか,いまひとつすっきりまとまっていないような印象を受けてしまいます。しかし個人的には,中国雲南省は一度行ってみたい土地のひとつですので,そういったところは楽しめました。それにしても「蠱」ネタは,最近流行なんでしょうか? よく見かけます。
「ART.6 キャラ立ちぬ」
 ふと見かけた携帯電話のストラップ。藤田はそれに並々ならぬ才能の存在を感じ取り・・・
 携帯電話のストラップと根付というのは,たしかによく似ているのかもしれませんね(ケータイ持ってないけど^^;;)。根付ってたしかにおもしろいんですが,あの「せせこましさ」がどうもいまいち馴染めないからなぁ・・・(^^ゞ

99/11/03

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