細野不二彦『ギャラリーフェイク』12巻 小学館 1998年

 “ギャラリーフェイク”のオーナー,ミスタ・フジタは,例によって,世界各地を飛び回っていますが,今回は,日本を舞台にしたエピソードが多いようです。
 それにしても,絵柄が少し変わりましたね,この作者。

「女神の憂鬱」
 絵のモデルというのは,楽そうでいて,けっこう大変なんですね。20分間,身動きせずにポーズをとり続けるというのは,たしかにしんどそうです。
「城下の棋士」
 モデルはやっぱり羽生名人でしょうか。同じ掲載誌『スピリッツ』で『月下の棋士』というのを連載してますが,タイトルはそのパロディなのでしょう。「温泉に卓球」・・・,フジタはやっぱりオヤジだ(笑)。
「地震観音」
 阪神・淡路大震災以後,外国から美術品を借りるのが大変になったという話を聞いたことがあります。貸し渋ったり,展示場にいろいろ厳しい条件を付けたり・・・。地震の少ない欧米式の展示・保管方法では,地震大国・日本では,ダメなんでしょうね。
「地図は導く」
 古地図は,“正確さ”という点では,今の地図よりも劣るのかもしれませんが,昔の人々が“世界”をどのように眺めていたかを想像すると,なんとも楽しいです。それと子どもの頃に読んだジュヴナイルによく出てくる「宝島の地図」なんてのも,わくわくしますね。
「贋作王・バスティアーニ」
 本巻で唯一の上下編。ミステリ仕立ての作品です。オリジナルを凌ぐほどのコピーは,それ自身,一個の芸術作品なのかもしれません。ミステリでも,同じトリックやプロットを使っても,後発の作品が高い評価を得ているようなことがありますからね。オリジナルとコピーとの関係というのは,一筋縄ではいかないようです。欧米のミステリ作品を彷彿させる,なかなか佳品です。
「地下墓所(カタコンベ)のマリア」
 ああ,すっかり忘れてました,フジタの隠し子(?)リザの存在。そういえばこういうキャラもいましたね。ま,なんやかやでリザの落ち着き先が決まり,このエピソードはとりあえず一段落といったところでしょうか。なぁぁんの前振りも伏線もありませんでしたが(笑)。途中,フジタとリザがローマで遊ぶシーンは,『ローマの休日』のパロディですね。イタリアのカタコンベは,一度は行ってみたい場所のひとつです。
「下戸 上戸」
 唐津焼きネタです。一時期,佐賀県に住んでいたので,土産物屋に唐津焼きのぐい呑みやらお茶碗やらが並んでいるのを,よく見かけました。有田の陶器市なんてのもありましたし。この作品で出てくる“皮鯨”,えらい評価が高いようですが,個人的にはあんまり好きじゃない(苦笑)。絵唐津の方が好き。
「梅雨晴れの日に」
 ジッポーネタです。わたしもかつてジッポーを愛用(?)していましたが,飲み屋で3個も忘れて以来,100円ライター愛用者に転身してしまった軟弱ものです。胸ポケットに入れると重いし(笑)。

98/03/12

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