高橋葉介『学校怪談』14巻 秋田書店 2000年

 恒例のカヴァ折り込み(というのか?)の作者の「一言」によれば,「山岸君も立石さんもずいぶん逞しくなってきた様です」とのこと。たしかにこの巻での山岸くん,霊感がパワァ・アップしたという感じで,「襲われるばかり」というシチュエーションから脱却しつつあるようです。

 たとえば「第235話 殺意の弾道」は,殺人事件を予知した山岸くんが,「犯人」の犯行を阻止しようと,その「力」を駆使します。ラストで九段先生に助けられるというところは「お約束」ではありますが,のほほんとした彼の性格からすると,ずいぶんと様変わりです。そんな彼に立石さんも惚れ直し,急接近,というところで八千華が邪魔するのも,これまた「お約束」ですな(笑)。
 しかしパワァ・アップしたからといって,けっして攻撃的にならないところが彼のいいところでしょう。「第237話 魔少年」では,同じような「力」をもつ邪悪な少年と対決した山岸くんは,相手の力を吸い取ることで勝利しますが,ラスト,「余分な力は要らないな。僕には必要ない。「君」にあげるよ」といって,桜の幹に手をあて,花を咲かせます。こういったところが,彼らしくていいですね(ところで,この「魔少年」の顔立ちって,山岸くんを邪悪にするとこうなるんじゃないか,という感じですね)。
 だけど,まだ「力」の使い方は「若葉マーク」でして,「第233話 FLY ME TO THE MOON」で,「力」を使って,あるお婆さんの死んだ孫の身替わりとなった山岸くんは,九段先生にやさしく説教されます。このエピソードで,はじめて,大学生時代の九段先生が登場します。オートバイ事故で死ぬ間際のボーイフレンドに,優しさゆえに「夢」を見させたばかりに,彼の魂は自分の死を知らず彷徨っているという,彼女の苦い思い出です。九段先生は,いじめられっ子だった14歳の頃といい,この思い出といい,そんな哀しみや苦しみがあるからこそ,今のように元気いっぱいになれるのかもしれませんね。
 そのほかにも,パイロットが心臓麻痺を起こし,学校の校庭に飛行機が墜落しそうになるという「第231話 ゴースト・フライト」,立石さんが知り合った病身の少女が,死んだのち,「鳥」になって立石さんを連れ去ろうとする無言劇「第238話 鳥」「物に執着しても寂しい,物に執着しなくても寂しい,人間はわがままだねぇ・・・」というセリフが胸に響く「第240話 妖魔対決」,九段先生がほんのわずかの間に子どもを産み,そして失うという「第244話 竜の通る道」などなど,この巻は,しんみりとした話が多いですね。

 といっても,八千華と溝呂木が出てくるエピソードは,やっぱりスラプスティクです。「第232話 ゴキブリ・マスター」では,溝呂木の妄想炸裂!(笑)。「男の夢だぞ 裸エプロン!!」って力説する溝呂木の姿に,思わず大笑いしながら,納得している自分がいたりして(=^^=)。また「第239話 ストーカーズ」では,「エプロンドレス着て,ねじ持って踊った」という,「相当マイナーなキャラ」のコスプレ(大爆笑)をした八千華に,ヲタクな幽霊がくっついてくるというお話。それと,いくらパワァ・アップしても,女性キャラ3人にかかれば,山岸くんは,やっぱり「おもちゃ」であることをやめられないというお話でもあります^^;; 

 さて,この巻の最後「第246話 雪の女神(“雪の女王”より)」で,めでたくファーストキスをした(んだろうなぁ,この展開なら)山岸くんと立石さん。これからどうなるのでしょうか・・・もしかして最終回は近いか?(でも「第242話 君の夢を聞かせて」は,「最終回用」にとってあったネタとのこと。これがどっちに転ぶかなぁ・・・)

00/04/15

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