高橋葉介『学校怪談』10巻 秋田書店 1998年

 この巻では,九段先生に横恋慕するみぞろぎ某が大活躍(笑)します。
 「ピエロ溝呂木タイム・トンネル・ショー」では,時間をさかのぼるトンネルに九段先生やらを誘い込むというお話。久しぶりにかわいかった頃の九段先生の顔が見られます(^^ゞ ところでトンネルにはいると若返るというネタ,手塚治虫の作品にありませんでしたっけ? あれは土管だったろうか?(<記憶あやふや・・・)。
 また「地下鉄(メトロ)でGO!」では,地下鉄を使って九段先生をパラレル・ワールドに迷い込ませます。山岸くんと夫婦になったり,不倫ワールドやら,いろいろな世界を彼女は彷徨いますが,八千華と立石さんがバーのホステスになっているのには笑ってしまいました。「フン,どーせまたオトコくわえ込んでたんでしょ。ケッ・・!」とのたまう立石さん。この世界では,高校卒業後,彼女にいったい何が起こっているのだろう???(@o@)
 そのほか「みぞろぎ湯」では,銭湯に来た先生をあちこちに連れ回して(?)「愛している」と言わせようとしますし,「F式みぞろぎ」では,見る相手がみんなみぞろぎに見えるというおぞましい世界(笑)を現出させます(このタイトルは大島弓子の「F式蘭丸」のパロディなのでしょうか? でも大島作品はほとんど読んでないからなぁ・・・)。ところでこのエピソードで,久方ぶりに峠美勒が出てきます。いつのまにか,「九鬼子の心のガードマン」になっています。唐突だけど,なんか納得できるようなところもあります。

 この巻で一番のお気に入りは「いつか海へ還る」です。立石双葉がのぞいた魚屋,そこにはクラスメートの顔をした魚が売られていた。そして彼女もしだいに魚に変身していき・・・というお話。家庭にトラブルを抱える少女だけに,彼女がメインになると,ちょっと哀しい雰囲気になるのですが,ラストの九段先生のセリフ,
「立石,いつかみんな海に還るさ。だけどずっと先の事なんだ。もっと年を取ってから。だから今は安心しておやすみ。いい子だから」
には,思わず「ぐっ」と来てしまいました。普段はおちゃらけている九段先生ですが,やっぱり決めるときは決めますね。
 そのほか,ただでさえ短い1本のエピソードに3編のショート・ショートを入れ込んだ「春の怪談」(とくに最初の,知らず知らずのうちに少年の魂を救う八千華のエピソード)や,民話を思わせるような「河童の花嫁」「首取り鬼」なども独特の味わいがありますね。家に住み着いた化け物のせいで,本人が一番怖いものを見せつけられるという「怖い家」もブラック・ユーモア風で楽しいです。それにしても山岸くんの一番怖いものが,じつは立石さんだったとは・・・。人の心の不可思議さを活写した作品です(笑)。少年の霊が,公園を守るという「公園警察」も,哀しい中にもほのぼのとしたものがあります。あと,作者が「あとがき」にも書いていますが,「こんにちは 赤ちゃん」は,とても通好みの(笑)モンスタが出てきます。

98/12/06

go back to "Comic's Room"