星野之宣『ブルー・ワールド』2巻 講談社 1997年

 現代と1億4000万年前のジュラ紀をつなぐ時間を超えた穴ーブルー・ホール。ジュラ紀探索のために赴いた科学者,軍人,ジャーナリスト。しかし地球磁場の変化のため,ブルー・ホールが閉じてしまい,彼らはジュラ紀に置き去りにされてしまう。ジュラ紀,それは恐竜たちが君臨するロスト・ワールド。人類たちは,ジュラ紀脱出のため,別のブルー・ホールへと,恐竜たちが支配する大密林の突破を目指す。だが・・・

 現代と恐竜の時代をつなぐ「ブルー・ホール」というネタは,数年前に発表された『ブルーホール』にも使われています。前作は,「ブルーホール」が発見され,調査に赴いた人類たちがやはり置き去りにされ,脱出をはかる物語ですが,それは今から6500万年前,つまり恐竜が絶滅する直前の時代を舞台にして,恐竜滅亡の原因となる巨大隕石の落下と関連づけた物語でした。『ブルーワールド』は,「ブルーホール」発見1年後,となっており,『ホール』での事件が,わずかですが触れられているので,続編ということになるのでしょうか?
 この『ブルー・ワールド』の舞台は,1億4000万年前,恐竜たちが全盛期へと発展していく先駆けとなる時代です。おまけにこの物語では,現在のように大陸が分裂する前の,巨大大陸・ゴンドワナ大陸を,歩いて突破するという,『ホール』以上に過酷な設定です。出てくる恐竜たちも,多種多彩,はじめのうちは化石に残っている恐竜ばかりでしたが,この2巻では,ついに持ち玉が尽きたのか(笑),モグラみたいな地底恐竜(地底怪獣?)までが,お目見えです。
 そして過酷な状況は,さまざまな人間間の不和と軋轢を生み出し,それがまた新たな危機を呼ぶことになります。星野作品は,SF的設定のものが主流ですが,つねにそこには人間同士の愛憎が描かれ,物語を盛り上げています。それゆえ,星野作品は,発想の豊かさ(“センス・オブ・ワンダー”とでもいうのでしょうか)とともに,人間ドラマとしても,読みごたえのある作品が多いと思います。

 さて一行は,不和と軋轢を内包しつつ,大密林突破を続けますが,どうやら次巻では,現代の方もなにやら一波乱ありそうです。単行本はどうも年1回のスローペースのようですので,またずいぶん待たされそうで,ちょっと残念です。まあ,その分,楽しみも多いですが・・・

97/03/27

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