吉田秋生『BANANA FISH』5・6巻 小学館文庫 1997年

 いやあ,今回も読ませてくれました。5巻が「動」とするなら,6巻は「静」ですな。いよいよ本格化するオーサーとの抗争。黒人のストリート・キッズ「ブラック・サバス」のリーダー,ケインと,チャイニーズ・キッズのボス,シン・スウ・リンの立ち会いの元,アッシュとオーサーの一対一の決闘が始まる。舞台は列車の走らない真夜中の地下鉄駅。が,掟を破ったオーサーは,手下とともにアッシュに襲撃をかける。暴走する列車の中でふたりの宿命の対決が開始される!ほんと,質のいいアクション映画を見るような展開です。

 6巻はうってかわって,陰謀ものです。オーサーとの対決で重傷を負ったアッシュ。一命は取り留めるものの,ふたたび彼にのびるコルシカ・マフィアの魔手。アッシュは犯罪者を使って人体実験を行う研究所に移送される。そこは,「BANANA FISH」をつくりだした研究所だった。一方,マックス・ロボたちの調査でしだいに明らかにされる「BANANA FISH」をめぐる国家的陰謀。そしてオーサーとの対決現場で逮捕された英二は,月龍の手に落ちるが,脱出。シイ・スウ・リンに助けられる。人体実験にされかけたアッシュは研究所から脱出をはかる。研究所に取材に来ていたロボと俊一。混乱する研究所の中で,彼らは巡り会うことができるのか?

 6巻では,アッシュの正体が明らかにされていきます。連載当初は「頭の切れるストリートキッズのリーダー」でしたが,どうやらゴルツィネから徹底的な英才教育をされていて,IQ200だそうです。4巻でコンピュータ・ハッカーみたいなこともしましたからねえ。だから失脚したゴルツィネも,アッシュに対しては複雑な思いがありそうです。「自分のつくったものは,他人ではなく自分が壊す」ううむ,ゆがんでいるなあ。

 それはともかく,なにやら黒幕らしき人物も,顔は見せませんがちらちら出てきて,いよいよ物語は佳境にはいってきたようです。アッシュは,英二は,月龍は,彼らにはどんな運命が待ち受けているのでしょうか?

97/03/03

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