川原泉『バビロンまで何マイル?』白泉社文庫 1997年

 リアリスト・月森仁希と謎の多国籍美少年・真船友理は,幼なじみの高校生。子供の頃に助けた地の妖精・グノーシスからもらった「新世代ソロモン王の指輪」は,赤く光ったら過去に飛び,青く光ったら現代に戻る,そんな不思議な指輪。ふたりは,あるときは恐竜全盛時代に,またあるときはルネサンス時代のイタリアへと,飛ばされるのだが,めげないふたりはしぶとく暮らしていく・・・。

 『花とゆめコミック』版の本書第1巻が出たのが,1991年。じつに6年の歳月を経て,ようやく文庫で「完璧版」が出ました。「もう続きは読めないんだろうなぁ」と思っていただけに,なんともうれしい刊行です v(^o^)v。でも,作者が最初に想定していた意味での「完結」なのだろうか,という疑問がちょっと残ってしまうのが残念です。だって,これで「完結」だったら,タイトルが意味不明になってしまいますものね。それに「謎の多国籍少年」という友理の設定が,ストーリーに絡んでくるではないか? という予想もしてましたが・・・・。まあそれでも,第1巻では未完であった「イタリア・ルネサンス編」というか「チェーザレ・ボルジア編」がとりあえずも最後まで読めた,ということで良しとしましょうかねぇ。「ルネサンス・イタリアもの」というと,森川久美とか,青池保子あたりがすぐ思い浮かびますが,カーラ版も味わいがあっていいですね。個人的にはヒゲのリカルドおじさんが好きですね(笑)

 それにしても川原泉さんは,いま,どうされているんでしょう? 白泉社の『セリエ・ミステリ』という雑誌に作品を発表しているという噂は聞いているんですが,実見してませんし,コミックもぜんぜん新しいのが出ない・・・(T_T) いや,じつはいろいろといやな予感にさいなまれているのです。『バビロン』の2巻がなかなか出ないのもそんな「いやな予感」の理由のひとつでしたし,その後の『メイプル戦記』の3巻を読んでも,「いやな予感」をひしひしと感じていました。『メイプル』3巻のストーリーは,たしかに「カーラ節」という感じで楽しめたのですが(とくに「わたしを野球に連れてって」の訳詞には「じん」と来てしまいました),ただ絵がちょっと・・・。試合のシーンが水島新司の絵のパクリのごとく酷似していたり,コピー絵が目についてしまうのは,読んでいてなんとも痛ましい感じがしました。『別冊宝島257 このマンガがすごい!』の中で『銀のロマンティック・・・わはは』が紹介されていて,この作品は大好きなだけにうれしかったんですが,「もっともパワフルだった頃の意欲作」というキャプションがついているのを見て,「辛辣だなぁ」と思いつつ,一方でそれに納得してしまっている自分が,なんとも哀しかったですね。

 ぜんぜん『バビロン』の感想文になっていませんが,とにかく言いたいことはひとつだけ。

 川原さ〜ん! プリーズ・カム・バァック!!

 また楽しい作品,読ませてくださぁぁぁい!!

 もし「その後の川原泉」(って,宮本武蔵か!)をご存じの方がおられたら,ご一報ください。

97/12/15

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