あさりよしとお『あさりよしとお短編集』徳間書店 1994年

 デビュー作を含め13編を収録しています。メジャー誌からマイナー誌まで,ロリコンマンガ誌からコンバットコミック誌,天下の(笑)『SFマガジン』までと,とにかく掲載誌がむちゃくちゃ幅広い。当然,作品の内容もそれに応じてさまざまですので,コメントは初出データ付きで(笑)

「宇宙刑事バスター」「宇宙刑事バスター2」
 初出は『コミックカーニバル』(87年)と『少年キャプテンセレクト』(91年)。人間の体内に寄生する「宇宙刑事」という設定は共通しますが,内容は別物。まぁウルトラマン以後,地球人と異星人とが「合体」するのは定番とはいえ,それを「寄生」という形で描いちゃうところが,悪趣味というか,なんというか(笑) なまじ画力がある分だけ,けっこうグロイです。
「地上最大の恩返し」
 初出はロリコン・ブーム初期の雑誌『レモンピープル』(83年)。掲載誌にしては,わりとおとなしめのナンセンス・コメディ。「まともそうな」中年のおっさんが,人の首を絞めているギャップに思わず笑っちゃいました。
「魔黒洲城」
 『大冒険』(84年)初出の作品。この雑誌,まったく知りません^^;; タイトルからして『超時空要塞マクロス』のパロディなのでしょうが,こちらも見ていないので,どこらへんがパロディなのだか…^^;; 「呪縛を破る」というベタベタなギャグが好きです。
「砂漠の魔王」
 初出は『アリスくらぶ』(84年)というロリコン雑誌(だと思います)。ですが,やはりロリ風味はほとんど感じられないナンセンス・ギャグ。う〜む,雑誌の趣向に迎合しない作者の志の高さや良し!(なのか?^^;;)
「ゾンビの七人」「ゾンビの用心棒」
 ともに『ザ・コンバット』(87年)掲載。タイトルからもわかりますように,ゾンビ・ネタによる,一応(笑)西部劇のパロディです。前者に出てくる,おまぬけな「グリーベレーのゾンビ」は秀逸。後者は,ゾンビ村の「名産」−ゾンビ牛から取れたチーズやヨーグルトなどなど−がいいですね。それにしても「ゾンビ村虐殺事件」って,ベトナム政府から文句が来そうで,怖い(^^ゞ
「蠢くもの」
 掲載誌は「美少女 in オカルトハウス」(84年)なる,ようわからん企画もの(?)。巨大ゴキブリの恐怖を描いた(笑)ホラー作品。 ラストの処理は,いかにもホラー映画のパロディ風ですね。
「ムーンチャイルド」
 『SFマガジン』(86年)初出。RPGのパロディですが,ブラック,レトロ,マニアックなギャグ満載の,ある意味,一番この作者らしい持ち味が出ている作品ですね。
「たたかう自衛官」
 これも『ザ・コンバット』(86年)掲載。特撮もののパロディですが,リビアだの,カダフィ大佐だの,実名をポンポン出しています。大丈夫なのか? 絵柄は浦沢直樹『パイナップルARMY』を意識している気配があります。
「逆襲の赤ずきん」
 『レモンピープル』(86年)初出。掲載誌本来の(?)過激さはほとんどありませんが,別方面で過激な作品。美少女が笑みを浮かべながら拷問する,って,やはり怖いものがありますよねぇ…^^;;
「それ行け宇宙パトロール」
 『The SFcomics』(86年)(詳細不明)掲載の,比較的まっとうな(笑)SFコメディ。ボケとツッコミを基本としたテンポのよい会話は,この作者の魅力のひとつでしょう。セミオートタイプの銃でのロシアン・ルーレットというギャグが苦笑させられます。
「木星ピケットライン」
 『少年サンデー』(81年)初出の,この作者の「第一次デビュー」作品です。絵柄的には,個性も何もあったものではありませんが,間の取り方に見られるセンス,会話のテンポの良さは,「再デビュー」の持ち味を十二分に発揮していると言えましょう。高校生のときの投稿作品とのこと,やはりただ者ではありません。

03/10/02

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