和田慎二『怪盗アマリリス』6〜8巻 白泉社 1993・1994年

 アイドルといえば映画! F・D・ナナの元にも映画出演の依頼が・・。ところがろくでもない脚本に,やる気のない監督。激怒したナナは,ならば自分たち高校生で映画をつくってしまえ! と決心し・・・

 というわけで,6・7巻は映画編「ナナのシネマパラダイス」であります。作者の日本映画に対する愛情と怨念がたっぷりと詰まったエピソードです(笑)。
 で,原作に選ばれたのが岩田慎二『超少女明日香』。ひさしぶりの岩田慎二の出演です。スガちゃんとの再会シーンで,「あれ以来音信不通で心配したぞ」という岩田。う〜む,「あれ」というのは,『スケバン刑事』のラストの方で,神恭一郎事務所が爆破されて以来,という意味でしょうかねぇ。そうか・・・,スガちゃんは同一人物だったんだ・・・(そうそう,1・2巻の感想文で,「スガちゃんにはモデルがいるのだろうか」と書いたら,はなさん@hanna's gardenからメールで,作者の奥さんがモデルではないかという情報をいただきました。遅くなりましたが,はなさん,ありがとうございました(_○_))。
 ま,それはともかく,映画を作り始めるわけですが,「明日香と一也」の関係を,「ナナ(アマリリス)と海」との関係にオーバーラップさせるとは・・・。たしかに明日香もナナも,いわば二面性のあるヒロインというところでは共通しますものね。おまけにナナがアマリリスであるということが海にばれてしまい,明日香が涙を浮かべて一也と別れる,「超少女明日香」のラストシーンを,そのまま「アマリリス」のクライマックス・シーンに持ってきたりするところは,お話づくりが巧いですね。それにしても,岩田慎二,いやさ和田慎二,自分の作品の中で,別の自分の作品の解説をしてしまうとは,なかなかせこいぞ!(<注:褒め言葉)。
 ところでナナの明日香もいいですが,やっぱり,このエピソード最大の見せ場は,ナナのママさんによる芙蓉夫人でしょう(笑)。「ホッホッホッホッ」には笑えます。それと「明日香シリーズ」のエンディングをパロった「甘く香る風は・・・あきれかえってなにも言わなかった・・・」とか。

 さて8巻は,「八雲クン失脚編(笑)」をはさんで,番外編「アルカディア作戦」であります。ただでさえ,なにかと「お遊び」の多いこの作品の極めつけ! ムウ=ミサは出るわ,忍者飛翔は出るわ,亜里沙は出るわ,“妖怪”信楽老はあの世から蘇ってくるわ,おまけにサイラス=フランケンシュタインまで担ぎ出してしまいます。わんだらさん@書庫の彷徨人から,「亜里沙が出るよ,飛翔が出るよ」というお話はうかがっていたのですが,これほどの豪華キャストとは! もう和田ファンにとっては,笑えるやら泣けるやらの番外編です。
 ストーリィは,謎の銀髪の人物より招待状を受け取ったムウ=ミサ,飛翔,アマリリスの3人。なかば脅迫されるように依頼されたことは,かつてナチスが開発したという“兵器”の奪取。不協和音の三人組は,“兵器”を輸送する列車に忍び込むが・・・,というお話。
 まぁ,例によって,多少(?)都合のいい展開ではありますが,作者も言うように「お遊び企画」としては,けっこう読ませるストーリィです(でもこの作者,ナチスの秘密兵器ネタって,好きですねぇ(笑))。
 それにしても,この作者の初期作品の常連キャラ・マックは,ムウ=ミサの前身だったんですねぇ。ずいぶんとイメージが違いますが・・・。

98/09/04

go back to "Comic's Room"