お母さんに入ってもらうようになってからは、プレイルームに入ってお母さんにしがみ
ついているY君を、みんなのあそびの様子を見えるように抱いてもらう。スタッフはY君
のそばに位置し、楽しいあそびがわかるようにあそびの中心スタッフや子どもとの声や
ことばでのかけ合いを大切にしながら、子どもたちと楽しそうにあそびを展開していった。
Y君がお母さんを引っ張ってあそぴに向かおうとしても、お母さんは動かないで、その場
でしばらくお母さんにもあそびの相手をしてもらい、声かけや励ましはスタッフが行う。
おあつまりや活動がお母さんと一緒だと表情も落ち着き、給食中は自分からすすんで
食べるのでお母さんには後ろに下がって見てもらい、歯みがきもスタッフと一緒にする。
給食後の自由あそびには自分からあそびに向かっていく姿も見られた。
また、お母さんだけでなく、Y君をとりまく家族全員とY君の発達についての
話し合う機会を持ち、「Y君にとって今、何が大切か」を共通理解したうえで一貫した
対応を行った。このような療育を経ていく中で、5月の中頃には、特定のスタッフとの
関係も徐々に育ち、お母さんの姿がある
だけで安心してあそびに向かっていくようになってきた。
{お母さんの手記}
4月から5月にかけて、Yと私は、ひたすら母子関係を回復し、センターが楽しく、
安心してあそべる場所であるということを、Yにわかってもらうために必死だったように思う。
Yの不安は極度に強く、私の洋服や手を握り、私以外の誰とも手をつなごうともしな
かった。センターはもちろん、家でも私をピッタリ横に置いておかなければ、安心して
あそべないようだった。私とじっくりとあそぶことをしながら、同時に父親との関係をつく
るため、お風呂に2人で入るなどの機会をつくり努力をした。また、祖父母にもセンター
の先生方との話し合いを持ったうえで協力をしてもらい、特に祖母は積極的に働きかけて
くれたことで、Yも私がいなくても祖母がいれば、少しの時間ならあそべるようになり、
表情も少しずつ明るくなっていった。また、Yが少しずつ自信をつけていろいろなことに
チャレンジしようとする気持ちが育っていることは、「自分で靴がはけるようになったこ
と」などに現れていたのだが、それでもまだ、私は毎日Yに付き添う日々が続いた。
《U期〜母子分離をおこなう》

6月に入り、Y君の母子関係の様子(Y君がスタッフや仲間を意識して楽しいあそびに
向かう力が少しずつついてきたことや、お母さんもY君の受け取め方が少しずつわかって
きたこと、スタッフもY君とのかかわりがつくりやすくなってきたことなど…)を見なが
ら母子分離を行うことになった。母子分離を行う際にスタッフで共通理解したことは

1.心の支えになるスタッフの心構え…Y君の気持ちに共感できる声かけ(「おもしろいね。」,
  「がんばったね。」,「すごいね。」など…)をしっかりすることで、「この人のそばならがんばれる」
  という安心感を培う。
2.楽しいあそびを展開する。…毎日の実践の反省の中で、あそびの中でY君が楽しんでいる
  ことは何か、どのようにすればY君が自分からあそびに向かっていくかを話しあい、
  次の日の実践に生かすようにする。
3.Y君が不安になり泣き出したときの対応・・・気持ちをしっかりと受け取めて、Y君が
 自分で立ち直ろうとする気持ちを大事にして励ます。
4.お母さんとの別れ方…Y君があそびに入ってあそびこみ出したところで、お母さんに
  「バイバイ」と言ってもらい、プレイルームからさっといなくなってもらう。
5.お母さんとの出会い・・・帰りの会のあとすぐ、お母さんにしっかりと抱きしめてほめてもらう。