事例@気持ちの通じ合いを求めて〜Uくんの育ちを通してへ
■来談時のようす
初回来談日 H7.9.19(3歳4ヶ月時)
兄弟一緒に来談するが、兄のU君の方は、一時もじっとしておらず、部屋の中に
入ってもすぐに飛び出してしまう状況にあった。外では車に興味があるらしく、車の上に
乗り楽しそうに飛び跳ねている。
検査不能。
あそびの状態から、人との関係がほとんどついておらず、多動傾向になっている。
プレイルームに入ってもあそびの体験があまりないこともあり、ただ高いところを昇
り降りすることが中心。
※父親からの情報収集と本児の行動の様子から
 @あそびは身体を使っての感覚統合あそびを中心に
 A生活リズムづくり
※強度の偏食や睡艦障害もあるが療育活動の中での変化を期待してしばらく様子を見る。
 ☆療青センターの状況から、すぐに療育をスタートさせるが、1回/Wの「つくし」の保育と
   親子活動が中心。
「つくし」の療育スタート’95年11月から(週1回)
“パワー全開元気っ子がやってきた”
 「おはようございます!」お父さんに声をかけるやいなや、U君は、センター
の玄関からプレールームそして庭をぐるっとまわってまた玄関へと、園内をぐるぐるかけまわり、
5周以上を数えてもまだまだ続けて元気に走っています。初めは、
私も「風がピユーンだね」「それー」「ピョーン」など声をかけながら、一緒に走り続けました。
人への関心が育っていないU君が、まずは一緒にいても不快ではない関わりでつながりを
つくりたかったからです。しかし、ほとんどこちらは見向きもしてくれず、ひたすらピューピューと
走り続けるU君。そのうえ、U君はすごいスピードなのに、ころびもしないし、途中で
止まることもしません。私は目がまわってきました。
しかし、U君は全く平気なのです。私はそんなU君をみながら、“私や周囲の風景、園や
お友達がU君にはどんな風にうつっているのだろうか?”と思いました。
 エネルギー全開のU君。きっと、全身で園の広さや、園(お友達や先生)の雰囲気を
つかもうとしているのでしょう。でも、こんなにピュンピュン走っている中では、人の顔も、
一つ一つのあそびのおもしろさも、U君の目には、入ってはいかないでしょう。
外界と結び目をつくるとっかかりとして、何か「ハッ」と気にとめるようなことはできないかと
思い、走るコースの途中で、サッと別のコースヘ導いてみたり、通り道にカラーすのこを
敷いてみたりと、変化をつけてみました。しかし、全く気にもせず、目も心も身体も
止まりませんでした。
 さすがに、15周程、走ったあとは、少しずつスピードもおちました。そこで、区切りを
つけられるチャンスだと思い、プレールームを終着点にし、さっと抱えて「グルグルまわし」を
してみました。すると、ニコニコとほほえみ、ここちよさそうな表情が生まれました。
U君の外界との結び目は、こんな遊び(全身運動遊び・感覚運動あそび)のとりくみの中に
あることをつかんだ瞬間でした。
■たのしいあそびの経験を豊かに! ’96年4月から(毎日通園)
3歳半〜4歳までのU君の課題は、生活リズムの安定と、全身運動、感覚遊びの経鹸や
拡大でした。U君の自由な活動を見守りながら、おんぶやだっこのゆさぶりあそびで
気持ちを安定させることを大切にしながら、毎日の散歩、大型遊具あそび、感覚あそびなどに
とりくみました。ゆさぶりあそびでは、大人との共感や要求を、相手へ向ける力を
つけていけることも大切にして、U君が笑った際、保育者も一緒になってオーバーに
笑いころげ、楽しいね!という気持ちを倍増できるようにしてみせ、楽しい気持ちの
共有に努めました。
 また、U君の大好きになった感覚統合遊具にも、保育者も一緒に乗り、一人で乗るより
先生も一緒の方が楽しくなるように工夫してあそんでいきました。
そんなとりくみの中で、ホーススイングをぶら下げてほしい時には、先生の手をひいて
要求したり、ゆらしてもらってたのしい時には微笑みをかえす、ぐるぐるまわしをしてほしくて
近づいてきては、期待のまなざしで、そっと先生を見上げてくるなど、人への関心を育み
はじめました。