スマイルリボンが発行している「教えて!HTLV-1のこと」の本の中にも紹介している質問コーナーです。献血時でキャリアと解った時に、日赤はどのような対応をしているのか疑問に思って、各都道府県別日赤のHPを検索しました。その中で一番丁寧で詳細に
掲載してあったのが「三重県赤十字血液センター」でした。

※献血における質問や相談は各都道府県の日赤にご連絡ください。また、病気やウイルス、感染など全般に関する相談等は、近くにある各保健所に問い合わせて下さい。


HTLV−IについてのQ&A

(1) HTLV−Iについての基礎知識

 HTLV−Iとは何ですか?
 
 このウィルスは、古くから普通に存在してきたもので、主としてヒトの白血球の中のリンパ球に感染するウィルスの一つです。Human T-Lymphotropic Virus type1;ヒトTリンパ球向性ウィルス−1型の略称です。エイズウィルス(HIV)とは全く関係がありません。  

2 HTLV−I抗体とは何ですか?

 ウィルスが体内に入ると体が反応して抗体というものをつくります。HTLV−Iが体内に入ってつくられた抗体が、HTLV−I抗体です。

 血液検査でこのウィルスの抗体が陽性のときはHTLV−Iに感染しているといえるわけです。HTLV−I抗体が陽性の人をHTLV−Iキャリア(保有者または運搬者)といいます。ただし、新生児の場合は生後9ヶ月以降で抗体陽性のときにキャリアといえます。 注1)母親がキャリアの場合は、生後3〜6ヶ月程度は移行抗体が存在しているため、抗体検査では陽性となります。

3 感染から抗体ができるまで

感染の経路としては主に授乳、性交渉及び輸血によるものがありますが、HTLV−Iの感染力は極めて弱く、大量の生きたウィルス感染細胞(リンパ球)の移入がないと感染しません。
 長期授乳による感染は、母体側・児側の要因が複雑に絡み合い、母乳の中の感染細胞移行量(授乳期間・授乳量など)や感染細胞に対する児の感染性についての個体差、母体血中の移行抗体の存在などに影響されます。通常9ヶ月以降に新生児のHTLV−I抗体が陽性のときに感染が成立したと判定されます。
 性行為の場合は、精液中のリンパ球がこのウィルスを運びます。夫婦間の性交渉では、10年間観察した結果、HTLV−I抗体陽性の夫から妻へ60%の割合で、また、HTLV−I抗体陽性の妻から夫へ0.4%の割合で感染したとの報告がありますが、いつ抗体ができるかについてはわかっていません。
 輸血の場合は、大量の生きたウィルス感染細胞(リンパ球)が入るので数週間で抗体ができます。

4 HTLV−I発見の歴史

 1977年、高月(京都大学)らは日本の南西部、特に九州・沖縄に多発するT細胞性の白血病が新しいタイプのものであることからこれを成人T細胞白血病(ATL Adult T-cell Leukemia 以下「ATL」という)と命名しました。 1981年、日沼(京都大学)らはその原因がC型レトロウィルスであることを確認して、これをATLV(Adult T-cell LeukemiaVirus)と命名し、報告しました。また、吉田ら(癌研究所、現東京大学医科学研究所)もこれがATLの原因ウィルスであることを明らかにしています。
 しかし、この1年前にアメリカのGalloら(米国国立癌研究所)のグループも同様のウィルスを発見しており、現在ではHTLV−I(Human T-Lymphotropic Virus type1; ヒトTリンパ球向性ウィルス−1型)と呼ばれるようになりました。
 HTLV−Iは古くから人類と共存してきたウィルスで、日本では九州を含む西日本に多いとされています。

5 九州地区に多いのはなぜか?
  
 今のところわかっていません。  

6 HTLV−Iの検査法   

 HTLV−I感染によってつくられる抗体を検査することでウィルスの存在を知ることができます。
 検査法にはいくつかの種類があり、それぞれ長所と短所があるため、陽性の判定は2〜3法を組み合わせる必要がありますが、日本赤十字社では献血された血液についてPA法(ゼラチン粒子擬集法)でスクリーニングを行い、陽性になった場合に、EIA法(酵素抗体法)とIF法(間接蛍光抗体法)で確認検査を行うことにしました。この他の検査法としてはWB法(ウェスタンブロット法)、RIP(放射免疫沈降法)などもあります。  
 なおEIA法とIF法は検査結果の通知を行うために確認検査として今回から加えられたものです。
  検査結果でHTLV−I抗体陽性となった場合は、HTLV−Iに感染している可能性があると思われ、そのような人をキャリアといいます。


(2) 感染経路と感染頻度

1 HTLV−Iの感染経路  

 HTLV−Iの感染はキャリアからの生きたウィルス感染細胞(リンパ球)が体内に入ることでおこります。感染経路としては、

   (1) 母子感染
   (2) 性交渉感染
   (3) 輸血による感染の三つがあります。

 輸血による感染は、HTLV−I抗体検査により、ほぼ100%阻止されておりますので、主な感染経路は母子感染と性交渉感染(主に夫から妻)です。 この他にもHTLV−I抗体陽性血液に汚染された注射器による感染の報告がありますが、極々まれです。

2 HTLV−Iの感染力  

 HTLV−Iの感染力は極めて弱く、大量の生きたウィルス感染細胞(リンパ球)の移入がないと感染しません。しかも、このウィルス感染細胞は乾燥・熱・洗剤で簡単に死滅するため、水・衣類・食器・寝具・器具などを通して感染することはなく、インフルエンザのような飛沫感染もありません。従って、普通の生活での家族感染や職場での感染はありません。特別な配慮は必要ありません。

3 HTLV−I感染の頻度  
 
 輸血による感染は、HTLV−I抗体検査により、ほぼ100%阻止されておりますので、主な感染経路は母子感染と性交渉感染(主に夫から妻)です。 母子感染では、長期授乳により約20%の子どもにHTLV−Iが感染するといわれています。断乳や人工乳の場合は数%です(参照;Uの5:感染は防止できますか;Xの1:母子感染について)。  
 夫婦間の性交渉では、10年間の調査の結果、HTLV−I抗体陽性の夫から妻へ60%の割合で、またHTLV−I抗体陽性の妻から夫へ0.4%の割合で感染するといわれています。コンド−ムを使用することで感染防止が可能です。  
 最近のデータでは若年層のHTLV−Iキャリアが激減しています。母子感染での予防が続けば、若年層のHTLV−Iキャリアは、今後も減少すると思われます。

4 ピアスやいれずみ・歯の治療・はり治療・理髪店・キス

 HTLV−Iの感染量は極めて弱く、大量の生きたウィルス感染細胞(リンパ球)の移入がないと感染しませんので、感染の可能性はないと思われます。

5 感染は防止できますか?
 
 ウィルス感染の広がりは防止できます。 すでに輸血を介する感染は、HTLV−I抗体検査により、ほぼ100%阻止されています。
 母子感染は長期授乳(断乳をしない場合)での感染率は20%で、長期授乳児の全員が感染するのではありません。また、抗体陽性のお母さんについては断乳して人工乳にかえるか、または凍結溶融解処理をして授乳するかで、大幅に感染率を下げることができます。
 性行為の場合は、精液中のリンパ球がこのウィルスを運びます。夫婦間の性交渉での感染は、10年間の調査の結果、HTLV−I抗体陽性の妻から夫への感染は極めてまれ(0.4%)であり、HTLV−I抗体陽性の夫から妻へは60%でした。妻に感染しても子どもへの感染は上記のように防止可能です。また、性交渉感染はコンドームを使用することで感染防止が可能です。しかも、成人してからの感染の場合、ATLの発症についての報告はありません。
  いずれにしても、ウィルスが入ったからといって必ずしも感染するものではありません。

6 献血で感染することは?
 
 血液センターで使用する注射針をはじめ、全ての採血器具は一人一人に新しいものを使用し、使い捨てですので、献血で感染することはありません。


(3) HTLV−I関連疾患とその周辺

1 HTLV−I関連疾患
 
 HTLV−I関連疾患(HTLV−I感染に伴っておこることのある疾患)には、

   (1) 成人T細胞白血病(リンパ球の一種であるT細胞が癌化する疾患)
   (2) HAM(ハム:歩行障害や排尿障害を引き起こす脊髄疾患)
   (3) ブドウ膜炎(眼球内のブドウ膜の炎症)
   (4) その他(関節炎、気管支炎)                                        などがあります。しかしながら発症するのはキャリア(感染者)のごく一部であり、また感染しても直ちに発症するわけではありません、ほとんどのキャリアの方は生涯、関連疾患を発症することなく過ごされています。

2 関連疾患の発生頻度

 40歳以上の抗体陽性者で年間1,000人に1人の割合で成人T細胞白血病(ATL)を発症するといわれています。しかし、1日に20本以上の紙巻きたばこを20歳から吸い続けると生涯に肺ガンで死亡する確率は、約10人に1人であると推定されていることに比べると、HTLV−I抗体陽性者が成人T細胞白血病を発症する確率はこの5分の1以下ということになります。  
 また、HAMと呼ばれる脊髄疾患の発症率はATLより低く、抗体陽性者で年間3万人に1人と推定されています。また、HAMは治療法が次第に確立されつつあります。

 ATLの症状    ATLでは主に以下のような症状がでます。
 
   (1) 持続的なリンパ節の腫大(腫れ)や腹部膨満感
   (2) 難治性の皮膚病変(皮疹)

40歳以上の方でこのような症状がでたら最寄りの医療機関(血液内科のある病院)の受診が必要です。

4 HAMの症状   HAMでは主に以下のような症状がでます。

   (1) 歩行障害
   (2) 排尿、排便障害
   (3) 下肢の脱力感

 このような症状がでたら最寄りの医療機関(神経内科のある病院)の受診が必要です。

5 感染したときの症状は?

 感染しただけでは症状はでません。また、感染してもほとんどの人は発病しません。

6 感染から発病までの期間は?  

 感染してもほとんどの人は発病しません。ごくまれに発病する場合でもATLでは発病まで感染後数十年かかるといわれています。そのほとんど全部が母乳による母子感染キャリアであり、40歳以後に発症しているといわれています。HAMの場合は発症までの期間はいろいろのようですが、ATLに比べれば発症の割合ははるかに少ないとされています。また、ウィルスが入ったからといって必ずしも感染するものではありませんし、抗体陽性というだけですぐに発病を考えることはありません。ほとんどのキャリアの方は生涯、関連疾患を発病することなく過ごされています(参照;Vの2:関連疾患の発生頻度)。

7 HTLV−I感染の防止    参照;(2)の5:感染は防止できますか?

8 発病の予防法はありますか?

 現在のところ発症予防法はありません。健康管理については受診されたかかりつけの先生や最寄りの医療機関にご相談ください。  

9 関連疾患の治療法は?  
 
 HTLV−Iキャリアのウィルスを完全に排除する方法はありません。晩年に発症するATL、またHAMその他の疾患は、効果的な治療法は報告されていますが、必ずしも完治させる治療法は報告されていません。しかし、ATLでは骨髄移植でウィルスを排除した報告もあります。詳細は受診されたかかりつけの先生や最寄りの医療機関でお尋ねください。

(4) キャリアがいる家庭の日常生活の注意

1 家庭にキャリアがいるのですが?

 HTLV−Iのウィルスはリンパ球の中に潜んでおり、またその感染力は極めて弱いことがわかっています(参照;Uの2:HTLV−Iの感染力)。   
 感染経路(参照;Uの1:HTLV−Iの感染経路)と感染防止(参照;Uの5:感染は防止できますか)についてはすでに説明しましたが、そんなに心配する必要はありません。また、成人してからの感染者(キャリアになった人)にはATL発病の報告がないことから、通常は普通に生活していただいて問題ありません。


2 家族にATL(HAM)がいるのですが?

 参照;(4)の1:家庭にキャリアがいるのですが?

3 婚約者がHTLV−I抗体陽性なのですが?   

 参照;(4)の1:家庭にキャリアがいるのですが?。男性の場合は、感染する可能性が極めて低く、婚約者から子どもへの感染もほぼ防止できますので、結婚に差し支えはありません。女性の場合は、パートナーからの感染は10年間で60%です。なお、成人で感染した場合は、ATL発病の報告がありません。子ども等の場合も同様です。

4 HTLV−I抗体陽性者は結婚できますか?

 参照;(4)の3:婚約者がHTLV−I抗体陽性なのですが?

5 夫婦間感染について

 参照;(4)の3:婚約者がHTLV−I抗体陽性なのですが?

6 妊娠とHTLV−I   参照;(5):母子感染とその関連事項

7 定期検査の間隔・期間は?

 かかりつけの先生や最寄りの医療機関の指示に従ってください。

8 仕事は続けられますか?

 全く問題ありません。

9 遺伝との関係は?

 ATLもHAMもHTLV−Iというウィルスの感染が関係するので、遺伝はしません。


(5) 母子感染とその関連事項

1 母子(乳)感染について

 母子感染は母乳による感染が大部分で、最近のデータでは長期授乳による母子感染は約20%程度といわれています。しかし、断乳により大部分は感染の防止が可能です。   また、母乳も凍結融解処理すれば感染力は低下します。断乳も報告者によって差がありますが、初乳から断乳・短期授乳後の断乳があります。詳しい断乳の方法については、妊娠時に産科医にご相談ください。


2 母乳以外の母子感染について  
 
 出産直後からの人工栄養児(断乳させた児)にもまれにHTLV−I抗体陽性児がある(約4〜5%)ことから、経胎盤感染等も否定できません。

3 乳幼児への口移しは?  
 
 今までに唾液によって感染したという報告はありませんので、心配する必要はないと思われます。


(6) 日常生活

1 職場や家庭生活での注意事項   

 このウィルスは、感染力が極めて弱いため、たとえ身近にウィルスの保有者または患者さんがいても、衣類や食器、寝具などでは感染しませんので、特別の配慮は必要ありません。   
 また、蚊、銭湯でも感染しません。インフルエンザのようにクシャミや咳などで飛沫感染することもありません。普通の家庭生活や学校・職場等の環境で感染することもありません。

2 学校生活での注意  
 
 このウィルスは、感染力が極めて弱いため、たとえ身近にウィルスの保有者または患者さんがいても、学校生活では感染しません。
 衣類や食器、寝具など特別の配慮は必要ありません。
 インフルエンザのように飛沫感染することもありません。

3 酒席での杯交換は?
 
 
 お酒の返杯や食器の共用では感染しません。普段の生活で感染することはありません。


(7) 通知後の相談窓口での対応

1 HTLV−I抗体陽性者への通知と相談窓口
  
 今回、HTLV−I抗体検査結果の通知については、献血者のうち通知を希望された方の中でHTLV−I抗体陽性と判定された方のみに行いました。HTLV−I抗体陽性者に正しい知識を与え、また不安を解消するために相談窓口を開設し、医療機関や保健所などを紹介できるように準備をしています。  

2 HTLV−I相談窓口
  
 血液センターでの相談は無料です。相談希望者は電話で連絡してください。血液センターでは医療機関を紹介する場合があります。  

3 相談窓口では何をしてくれるのですか?   

 質問や疑問に応じて日常生活での基本的な注意事項をお答えします。治療など専門的なことは医療機関をご紹介したいと思います。  

4 陽性の通知を受け取ったがどうしたらよいか?
  
 どのようなことをお聞きになりたいのですか?可能な限りお答えします。治療などの専門的なことはご紹介したいと思います。  

5 専門の病院を紹介してください。
  
 どこにお住まいですか。近くの専門医療機関をご紹介したいと思います。血液センターからの通知文と健康保険証を持参することをお勧めします。
 
6 家族の検査をしたいが
 
 血液センターでは受け付けておりません。一般医療機関または専門医療機関(血液内科のある病院)にご相談ください。通知文と健康保険証を持参す
ることをお勧めします。  

7 今まで何回も献血したのにどうして  
 
 今までは、国(厚生省)の方針で通知されていませんでした。しかし、
 (1) HTLV−I抗体陽性の血液の有効利用を考えて、血漿を保管していましたが、HTLV−I抗体陽性血漿の分画製剤への利用は、患者さんの安全性の保証が必ずしもできないということで、献血者の善意に応えられなくなったこと。
 (2) 通知することでかえって不安を与えることを心配しておりましたが、学問の進歩でHTLV−Iや関連疾患などの解明が進み、HTLV−Iが病気を引き起こすことはあまりないことがわかり、通知を受けた人の精神的影響も少ないことがわかったこと。
 (3) 情報公開(知る権利)の時期にあること。 などから、希望する人には通知するという方針がH10.7.21に開催された厚生省の中央薬事審議会でだされたからです。  

8 今までの抗体陽性の血液はどうなったのか?
  
 「有効利用のための研究・開発」や「試薬・ワクチン開発」のために使用されました。また、献血された血漿については分画センター(北海道)に保管され、有効期限(4年)が切れたものは処分されています。  

9 今後の献血について  
 
 HTLV−I抗体陽性の場合、分画製剤用の原料として使用できなくなりました。折角のご好意に添えなくて申し訳ございませんが、次回からの献血はご遠慮ください。


(8) HTLV−I抗体陽性献血者への結果通知の経緯

1 ウィルス検査はいつから行われてきたか?
  
 日本赤十字社では、昭和61年11月から全ての献血血液に対してHTLV−I抗体スクリーニング検査を実施してきました。  

2 抗体検査でHTLV−I抗体陽性と判定された献血血液はどのように処理されているのか?  
 
 検査開始以降、陽性血液は血液製剤として使用されていません(厚生省通知)。   
 同検査で陽性と判定された献血血液については輸血に使用できないことから、同血液の有効利用を図るため、その一部は研究・開発・試薬開発などのために使用してきましたが、その他のものは血漿分画製剤用原料として有効期限が切れるまで北海道千歳にある日本赤十字社血漿分画センターに保管されてきました。  

3 昭和61年に同検査が開始される以前に献血血液を輸血された患者に感染のおそれはないのか?  
 
 全ての血液がHTLV−Iに感染しているわけではなく、また、血漿成分のみ輸血された者への感染を示唆するデータはありません。また、輸血以外のHTLV−I感染でも、感染=ATLなどの発症ではなく、HTLV−I感染後もほとんどのキャリアは関連疾患を発症せずに過ごされています。



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