縦横切替サンプルページ。windows版IE5.5以上。以前のバージョンやマック版、NETSCAPEなどは表示できません。

稲の花とオリンピック

福永 碧風 

 稲に花が咲くのをご存知だろうか。農家は知っているが、それ以外の方は見たことがないと思う。東北地方と九州地方では田植えの時期も異なるから時期は特定できないが、およそ田植えから二ヶ月〜二ヵ月半後の早朝花が咲く。私の住んでいる鹿児島北部はおおむね八月二十日から九月の初めにかけて咲く。今年は気温が高かったので十五日のお盆過ぎには穂が出始めた。二十五日くらいが開花日ではないだろうか。
 稲は自家受粉である。自分の花の雌雄が結ばれる。だから隣にもち米とか他の品種を植えていても雑種が出来ることは極めて稀である。大根などの十字花野菜の虫媒花や風媒花は、他の株の雄花の花粉で受粉して最良の子孫を残すが、自家受粉では結果しないか、貧弱な種しか出来ないのである。
稲の花は命が短い、およそ二時間後にはしぼんでしまう。私の記憶では朝日が出る六時ごろに咲き始め暑さを感じる十時ごろには完全にしぼんでいたと思う。

開花して約三十分後の稲の花
(画像はウェブサイト「四季の彩り」より)

 このサイトの作者は、農協中央会の「バケツで稲作り」に応募して観察記録を作成した神戸の女性だ。細かな観察記録と写真を残しておられる。彼女の観察では、稲の花は咲いてから籾殻が閉じて雌花が見えなくなるまで約六十分だそうだ。
 私たち農家はそこまでじっくりと観察するゆとりがない。ちょうど草が伸びていて草刈りにあちこちの田圃を走り回っている時期だ。特に私は合鴨を入れているので、花が咲き穂が充実してくる前には合鴨を引き上げなくてはならないのだ。何故って、合鴨は稲の葉は食べないが穂=米は大好きだ。結実する前に引き上げないと首を伸びして段々垂れてくる稲穂を食べ尽されてしまうから。
 今年二〇〇四年はHOTーSUMMERだったので豊作を予感させる生長振りだ。この後は、台風が直撃しないことを祈るばかりである。
 今、アテネオリンピックの熱気でさらに暑くなっている。私が「ごはん普及協会会長」なら、柔道女子63キロ級で金メダルを取った谷本歩実さんを起用し「ご飯を食べて金メダルを取ろう!」というTVコマーシャルを作成する。あの笑顔は素敵だ。アジアモンスーンで育った日本選手には、やはり「ごはん」がエネルギー源であると信じたい。

二〇〇四年八月二十日・・・「碧風」は二十年来の私の俳号です。

Topへ戻る