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本種はCeratium属の4つの亜属のうち,Amphiceratiumに分類される。細胞は長さ300〜600
μ,巾15〜30μ。上殻は先端ほど細くなり,細長い頂角を形成している。そして細胞全体は, 背部の方に弓形に弱く曲がっている。左後角は細く伸び,右後角は極めて小さいか,時にこれ を欠いている。細胞の分裂はC.furcaと異なって,夜半に行われるといわれている。分裂後はC. furcaと同様に2個の娘細胞が群体を形成し,それ以上長い群体はつくらない。また,群体の 結合は弱いので,自然の状態で群体えおみることは殆んどないようである。
Ceratium属の角が変化した奇型的なものについての報告は古くからあるが,KOFID(1908)は
サンディエゴ沖から採集された標本の中に,角が切れた奇型的なCeratium が海の深層から より多く見出されることを報告している。
その後HASLE&NORDLI(1951)はオスロ−フィヨルドのC.fususとC.triposの奇型を報じ,培養
によっても多くの自切現象(autotomy)を観察した。筆者もCeratium を培養して,同じような自 切現象を観察したことがある。これについては,海水の塩分濃度と水温が関係するといわれる が,原因はまだ明らかでない。自切を起こしたものが分裂すると,生じた娘細胞も必ら自切し ているので,遺伝的要素が多分に含まれると考えている。
本種は,C.furca と同様に表層性種であるとともに,世界各地に広く分布している。しかし
HASLE (1950)や鳥海(1976)の観察では,明らかにその垂直分布に差違がみられ,両種の光 に対する反応は異なるように思われる。本種はまた,浅海の低層で多数増殖することがあり, 底土から溶出する増殖促進物質によって光合成が活発になるものと思われる。海表面に本種 が多いときは,夜著しい燐光を発するという。
〔記述:鳥海三郎〕
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