細胞は円筒状で蓋殻面は楕円形を有し，堅密に結合し，両端異形の連鎖状群体を作る。こ
の異極性（Heteropol）（両端の異なること）は両末端の細胞の刺毛の形を異にする。刺毛特に
末端刺毛の太いために群体の概観は粗大である。細胞の幅33〜40μ，蓋殻面平坦。環帯の
くびれは明かで殻隙は極めて狭いかまたはこれを欠く。刺毛は殻縁のやや内方より出で全く基
部を欠き，これがため相隣る細胞は密着するに至る。刺毛は断面六角形でその稜角に著しい
棘列あり。群体の最上位の末端刺毛（Endborsten）は著大で長く外方に開き，最下位の末端
刺毛はさらに前者よりも太いが，長さは幾分か短い。末端刺毛の断面は多角形をなす。本種
にはしばしばVorticellaの附着することがある。                       

　本種は熱帯ないし亜熱帯性といわれるが広い分布を有し，大西洋では北緯47度まで分布す
る。本邦では南方から北海道近海まで普通に発見される。陸奥湾には10月頃発見される。し
かし大量に出現することはない。 　（日本海洋プランクトン図鑑より引用）

【付記】キートセロスの種名について

　生物の種名は，属名と種小名をあわせた二名法で表記される。ラテン語の属名は女性，男
性，中性いずれかの性を持ちこの性によって種小名の語尾が変わる。                

　キートセロスChaetocerosは現在中性で扱われている文献が多いが，Rines and Hargraves
(1988)によれば，もともとキートセロスの性は男性であるとし説得力もある。 

　ここでは，Rines and Hargravesの説を支持し，男性説で表記した。                  

Reference   

J.E.B.Rines＆P.E.Hargraves(1988)：TheChatoceros Ehrenberg(Bacillariophyceae)Flora of

Narragansett Bay,Rhode island,U.S.A.,Bibliothece Phycologica,79