・ | 近世初期の頃から島津家では藩内に記録所をおき、古文書の収集や数々の編纂事業が行われてきました。しかし一方では、廃仏毀釈・廃藩置県・西南戦争・第二次世界大戦をはじめとして政変や火災の際に、多くの史料が散逸あるいは焼失してしまいました。 そのようななか、尚古集成館では島津家に伝わった古文書約6000点を含む約1万点の史料を収蔵しています。けれども、これは、元来島津家に伝わていた史料のすべてというわけではありません。 |
・ | 武家文書の白眉と定評のある島津家文書1万5000点余りは、現在東京大学史料編纂所所蔵となっています。それらは、島津家伝来の古文書の他にも有力士族や家臣団の史料なども含む膨大なものですが、現在、これらの史料は、東京大学史料編纂所と鹿児島県歴史資料センタ−黎明館によって順次活字化されています。(『大日本古文書』、『鹿児島県史料』) |
・ | 一方、尚古集成館に収蔵されている古文書は一部には中世の文書類も含まれていますが、近世・近代の文書や日記類が中心であり、現在、尚古集成館では、近代史料の整理及び調査を重点的に行っています。 |
・ | 島津家に伝わっていた古文書以外の美術品や工芸品などの資料も、厖大な数にのぼると推測されますが、やはり、人災・天災などで失われた資料も少なくありません。さらに、昭和3年に東京美術倶楽部で行われた公爵島津家蔵品の売り立てによって多くの資料が全国各地に散逸してしまいました。 |
・ | しかし尚古集成館には、なお、当主らの肖像画や書画の他に、武具、装束、道具類や薩摩切子、薩摩焼など約4000点の資料が収蔵されています。 |
・ | 現在、鹿児島県歴史資料センタ−黎明館や鹿児島市立美術館では、資料の収集が積極的に行われていますが、その中には、島津家関連の美術品や工芸品もみることができます。 |
・ | 薩摩切子は、現在112点が確認(昭和63年度調べ)されており、内31点が尚古集成館に収蔵されています。薩摩切子は鹿児島市立美術館にも4点収蔵されていますが、サントリ−美術館に20数点のコレクションがあります。 |
・ | また、島津久光を祖とする玉里島津家の旧蔵史料は、玉里文庫と称されており、鹿児島大学附属図書館と鹿児島県歴史資料センタ−黎明館に収蔵管理され、島津家文書とともに島津家の研究には欠かせない貴重な資料となっています。 |
・ | この他、鹿児島県立図書館にも、島津家関連の資料が若干収蔵されています。 |
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・尚古集成館 〒892 鹿児島市吉野町9698−1 TEL 099−247−1511 ・鹿児島県歴史資料センタ−黎明館 ・鹿児島市立美術館 ・鹿児島大学付属図書館 ・鹿児島県立図書館 ・東京大学史料編纂所 ・サントリ−美術館 |
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・五味克夫「鹿児島県の古文書」 (鹿児島大学人文科学論集)S38 ・五味克夫「薩藩史料伝存の事情と事例」 ・五味克夫「薩藩の記録所と記録奉行覚書」 ・黎明館開館10周年・県史編纂事業25周年記念座談会 ・田村省三『尚古集成館』 ・『旧家族家史料所在調査報告書』本編2 ・寺尾美保『史料掛が語る島津家の史料管理について |