食物アレルギーに関して  

Q: 一開業医の立場で質問いたします。食物アレルギーに関してですが、見るからにアトピー性皮膚炎が判然としている小児の場合などは理解出来ますが、一見正常児に見えて、母親が種々の食物アレルギーを並べ立てる症例があります。しっかりと検査など受けて根拠があれば良いのですが、それが不明の場合には,「どの様な食物」に特に留意して問診すべきでしょうか?

: 食物アレルギーは非常に困ったことですよね。正常に見えても、的確にアレルギー除去食で押さえられているのかも知れません。どんな食事にアレルギーがあるかはお母さんが一番良く知っている筈です。ただ特異的IgE抗体検査(RAST)の結果陽性に出た食べ物をあれこれ並べられると「ああそうですか」と聴いてやるしかないでしょう。背景に指導した専門家がいるのですから。しかし実際は抗体検査が高くてもアレルギー反応を起さない例もあることですから、本当にその食べ物でアレルギー反応が起こった経緯があることが一番確実ではあるわけですよね。テストでショックと言う例もありますので、試験投与はしたくありません。小児科医は栄養のバランスのことを先ず考えますので、比較的無頓着を装っているようですね。
アレルギー食の横綱は、牛乳、大豆、卵と言われております。

: 塩化リゾチームを投与して下気道にいわゆるゼロゼロが発生、直ぐに服用を中止してもらいましたが、卵アレルギーのある子供でした。しかし、通常の予防接種は問題なく受けている由です。当科では塩化リゾチームを良く投与しますが、初めてのケースでした。以前拝聴したお話では、卵アレルギーの小児は、予防接種の際に注意すること、と云われました。時には予防接種の当番が来ないとは限りませんので、この辺りの取り扱いを御教示下さい。

: 塩化リゾチームは細菌細胞膜の構成成分である多糖類の加水分解を触媒する酵素であり、その結果が溶菌現象として薬効に使われているわけですが、生体内には広く分布しており、特に鶏卵白中には多く存在しているので、卵アレルギーの偵察隊のように言われております。ワクチンはウイルスを鶏卵培養して作った経緯はありますが、ワクチンに含まれる鶏卵の量は通常の生化学検査では検出出来ない程、極めて微量です。そこで鶏卵そのものにはアレルギーがあっても、鶏卵加工のカステラ、かるかん等に反応の無い人には使っても大事無いと思います。むしろゼラチンやマクロライド系抗生物質に過敏な人には要注意です。 薬剤アレルギーだけでなく、ただ針を刺す事による拒絶反応もありますので、法に決められた応急の対処方 等は心得て置くべきでしょう。

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