小谷野敦 Koyano, Atsushi

小谷野敦『もてない男』(ちくま新書・1999年)
相変わらず面白いよ、小谷野さん。相変わらずって言い方はおかしいな。昔から(といっても2年前だけれど)面白いですよ、小谷野さん。
本書は「もてない男」を擁護する、もっと言えば正当化するという意図で書かれている。心底異性を欲した学生時代にもてなかった「私怨」から書いているそうだから、ある意味、自分(の過去)を正当化しようとしているのかもしれない。
それにしたって、文学をベースとした「自己正当化」は見事だ。ご丁寧にも章ごとにブックガイド(【童貞をよむためのブックガイド】だの【恋愛を超越するためのブックガイド】)がついていてる(以前読んだ『バカのための読書術』と形態が似ている)。これだけ材料を出されて説得されれば、よっぽどのバカか、よっぽど頭のいい人以外は納得してしまうに違いない(あるいはめんどくさかったり、同情して反論を差し控えるかもしれない)。
ところどころ、ああ僕とは違うなというところがあるけれども、言っていることは至極まっとうな感じがする。僕ももてるほうではないけれど、かといってそれをあせったりってことはなかったな。鈍いんだろうか(笑)。
あと基本的に文章は攻撃的なんだけど、こと話がフェミニズムに及ぶとなんだか文章が落ち着くというか、真面目な感じになる。ちょっと意外な感じがしたけど、賢明だと思った(笑)
2001/11/23

小谷野敦『バカのための読書術』ちくま新書・2001年
「バカ面白い」の一言に尽きる。あっという間に読み終わった。まぁ新書だし、薄いってこともあるのだが、何しろ書いてることが面白く、挑発的。さらに文章が底抜けするほど平易だ(もちろん皮肉ではない)。そりゃ「バカ」に向けて書いているわけだから、小難しくするわけにはいかないだろう。そして、その「難しい本」をどちらかというと批判しているわけだしね。
面白いし、賛同できるところも多いのだが、耳が痛いところも、賛成できない部分もある。確かに私は「バカだと思われたくない」し、「こんな難しそうな本を読んでいる(選んでいる)なんてすごいなー」と思われたい(その割には・・・笑)。でも関心あるんだから仕方ない。「事実とは何か」とか「自分と他人が同じ人間であるという証拠はどこにあるのか」という問題設定をくだらないとは思わないし(それほど大事とも思わないが)、興味もあるからだ(無論小谷野自身も興味がないという訳ではおそらくなく、単に「バカ」には向かないと言っているだけだ)。
そして、言うまでもないが、小谷野はインテリだし、多分頭もかなりいい。それに、こういう本を書いたのは、本人が今の学生たちの、学力の低さに辟易しているからだし、危機感も抱いているからだ。この辺は本書にもにじみ出ているし、『論座』(2000年9月号)誌上での大月隆寛との対談(放談?)にもあらわれている。
だから、どうも本書は「オヤジの小言」に聞こえてしまう。まずは「事実」に就けという彼の主張にも、印象でものを語る私(それも誇大に!)にはかなり耳の痛い話だ(印象だけで「今、少年犯罪が増えている」とか言ったりしないだけましだろ!・・・ま、宮台や宮崎の啓蒙のおかげだが 笑)。確かに「統計」はかなり正確な傾向がでるらしい(そう言えば統計では否定されているらしい「残酷ゲーム(ホラー映画でも可)」の長期的悪影響や少年による殺人増加のウソにヒステリックに反応するPTAには結構辟易だよね)。ま、統計の取り方にもいろいろあるんでしょうけど。
ちょっと話がそれました(笑)。それに(カッコ)が多いなぁ。
-閑話休題-
本書は、多くの視点を含んだ、そして若干保守的な、教養入門書になっています。芸達者です、小谷野さん。オススメ。まずは軽く立ち読みしてみて。
ちなみに小谷野(こやの)さんは明治大学講師(多分今も)。大阪大を、いじめられて辞めたらしい(笑)。以前『もてない男』(ちくま新書)が結構話題になったと思うが、ちょっと恥ずかしくて買えない(笑)。でも本書がかなり面白かったので、他にも何冊か買ってみようと思っているところ。
2001/5/10

・発行年等は手許にある本の表記に従ってあります。
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